※本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。また、本記事の内容はあくまで筆者個人の見解であり、分析・予測の全てが正確であることを保証するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。
はじめに
今回銘柄分析したのはNSグループ(471A)です。
2025年12月16日に上場したばかりの家賃債務保証会社で、分析時点でまだ上場から9ヶ月ほどしか経っていない新しい銘柄です。
最初に目を引いたのは、IPO銘柄を調べていた際に、ビジネスモデルがストック型で安定していそうだと感じた点でした。さらに詳しく調べていく中で、全用途市場シェア10.9%(前年比+0.6pt)で業界No.1というポジションを持っていることも分かり、これは掘り下げる価値がありそうだと感じました。
それでは銘柄分析に移っていきます。
NSグループとはどんな会社か
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 株式会社NSグループ |
| 証券コード | 471A |
| 業種 | 家賃債務保証業 |
| 主力サービス | 住居用・事業用の家賃債務保証 |
| 決算期 | 12月期 |
家賃債務保証とは、賃貸住宅への入居時に必要な連帯保証人の代わりを保証会社が引き受けるサービスです。
NSグループは全用途市場(住居用+事業用)でシェア10.9%を握る業界最大手で、このシェアは前年比+0.6ptと拡大が続いています。「広く受け入れる審査」×「AIと独自ノウハウによる回収力」×業界最多水準の取扱店ネットワーク(68,210店)という組み合わせが、他社が模倣しにくい強みになっていると考えられます。
財務データの中身を読む
損益推移(連結・単位:百万円)
| 指標 | 2024年12月期(実績) | 2025年12月期(実績) | 2026年12月期(会社予想) |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | 26,348 | 29,826(+13.2%) | 33,069(+10.9%) |
| 営業利益 | 8,818 | 9,873(+12.0%) | 11,898(+20.5%) |
| 税引前利益 | 8,790 | 9,365(+6.5%) | 11,379(+21.5%) |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5,681 | 6,325(+11.3%) | 7,900(+24.9%) |
営業収益は堅調に二桁成長を続けている一方で、2025年12月期実績の営業利益成長率(+12.0%)は売上成長率(+13.2%)を下回っています。額面上は、売上が伸びるほど利益率も上がる「営業レバレッジ」が効いていないように見えます。
ただし調べてみると、この理由は本業の収益性悪化ではなく、上場に伴う一時費用と先行投資が主因でした(詳しくは後述します)。実際、一時費用の影響が薄れた2026年上期の実績ではコストの伸びが売上の伸びを下回っており、地力としては営業レバレッジがむしろ効き始めています。
2026年12月期の会社予想は営業利益+20.5%・当期利益+24.9%と一段と勢いを増す計画になっていますが、この数字は見た目ほど強くありません。理由を次で説明します。
見た目の伸び率と「実力ベース」の伸び率は違う
2025年12月期には、上場関連費用等9.17億円とマネジメントフィー5.33億円、合計14.49億円という一時的な費用がかかっていました。2026年12月期にはこの費用が発生しない前提のため、単純に前年と比較すると数字が大きく跳ね上がって見えます。
そこで、2025年実績にこの一時費用を足し戻した「クリーンな2025年」を土台にして、2026年予想と比べ直してみました。
| 2025年実績(決算書ベース) | 2025年実績(一時費用抜き) | 2026年予想(会社公式) | 実力ベースの伸び率 | 見た目の伸び率 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 営業利益 | 9,873百万円 | 11,322百万円 | 11,898百万円 | +5.1% | +20.5% |
| 当期利益 | 6,325百万円 | 7,288百万円 | 7,900百万円 | +8.4% | +24.9% |
「見た目の伸び率」(+20.5%・+24.9%)は、一番左の決算書そのままの2025年実績(一時費用込み)を分母にした伸び率です。一時費用の分だけ2025年の利益が低く抑えられていたため、2026年と比べると伸び率が実力以上に大きく見えます。
そこで、2025年実績に一時費用(営業利益ベースで14.49億円、当期利益ベースで税引後9.62億円)を足し戻した「クリーンな2025年」(中央の列)を土台に計算し直したのが「実力ベースの伸び率」です。見た目の「+20.5%」「+24.9%」という力強い数字は、一時費用が消えることによる押し上げ効果をかなり含んでいたことになります。実力ベースで見ると、営業利益は+5.1%、当期利益は+8.4%と、かなり穏やかな伸びにとどまります。
なお、2026年7月に子会社化したアルファー社の寄与(連結期間は5.5ヶ月分)を加えても、現状の収益力のままなら営業利益+5.3%・当期利益+8.7%、NSグループ並みに収益性を改善できた強気なシナリオでも営業利益+7.1%・当期利益+10.3%程度にとどまる計算です。アルファー社の売上規模(14億円)がNSグループ本体(298億円)の5%未満と小さいため、寄与額自体が成長率を大きくは動かしません。
財政状態
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 自己資本比率(2025年12月期末) | 37.94%(2026年中間期末は36.5%に低下) |
| ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率、2025年12月期) | 22.03% |
| 有利子負債(2026年3月末) | 258.68億円(純有利子負債は約110.47億円) |
| のれん(総資産に占める比率) | 約47% |
ROE22%はかなり高い水準に見えますが、高ROEには2つのパターンがあります。①本業の利益率が高くて稼げているパターンと、②借入を増やしたり資産を薄くしたりして数字を見かけ上膨らませているパターンです。
中身を分解して確認したところ、NSグループの高ROEの主な理由は①の利益率の高さ(21.2%)であり、借入や資産効率による見かけ上の嵩上げ効果は限定的でした。つまり「質のいい」高ROEと言えそうです。
ただし自己資本比率は38%前後と、一般的な目安である50%を下回っており、過去のM&A由来ののれんが総資産の約47%を占めていることが背景にあります。
配当・株主還元
| 期 | 配当(円) | 配当性向 |
|---|---|---|
| 2025年12月期(実績) | 35.0 | 50.1% |
| 2026年12月期(予想) | 76.0 | 50.2% |
配当利回りは5.02%(2026年7月29日終値1,513円ベース)で、配当性向はおおむね50%前後を維持する方針とみられます。あわせて2026年に2トランシェ・合計約64.6億円(上限ベース)の自己株式取得も実施しており、株主還元の姿勢は積極的だと感じました。
ビジネスモデルのKPIを追う
営業収益 ≒ 新規保証料(フロー) + 更新保証料(ストック)
| KPI | 2025年12月期 | 変化 |
|---|---|---|
| 新規保証料 | 84.5億円 | +5.6%(件数要因+0.8%・単価要因+4.8%) |
| 更新保証料 | 64.5億円 | +10.7% |
| 全用途市場シェア | 10.9% | +0.6pt(業界No.1) |
家賃債務保証はサブスクリプションに近い収益構造で、一度契約した入居者から継続的に更新料が入る「ストック収益」が2025年12月期の営業収益全体の53.4%を占めています。
更新保証料の伸び(+10.7%)が新規保証料の伸び(+5.6%)を上回っており、積み上がった契約が着実に収益へ貢献している構図が見えます。2026年上期(H1)の内訳を見ても、新規保証料(フロー)+8.6%に対し、更新保証料とその他売上(ストック的な収入)は合算で約+15.5%と、ストック収益がより強く成長を牽引しています。
市場シェアも全用途で10.9%と業界首位、しかも前年比でプラスに転じているという点は、単なる市場拡大への便乗ではなく、シェアそのものを奪えている証拠だと考えられます。
成長ストーリーをどう読むか
現在地:業界No.1の座を守りながらシェアを伸ばす局面
家賃債務保証の市場全体は、独立系調査会社(矢野経済研究所)の推計でCAGR(年平均成長率)約6.7%(2025〜2029年度)とされています。
一方、NSグループの営業収益成長率は+13.2%とこれを大きく上回っており、会社の成長は市場全体の拡大というより、シェア拡大への依存度が高いということが読み取れます。
次の成長ドライバー
① 「広く受け入れる審査」×「AI・独自ノウハウの回収力」
競合の多くが信用力の高い入居者に絞って審査するのに対し、NSグループはあえて審査を広く通す方針を採っています。
滞納者を段階別に分類して対応する「滞納解決スキーム」や事業用専任の回収チーム、AI活用の滞納予測モデル(2025年4月運用開始)などを組み合わせることでリスクをコントロールしており、「広く受け入れながら貸し倒れを抑える」という組み合わせが、競合が模倣しにくい部分だと考えられます。
② 業界最多水準の取扱店ネットワーク
取扱店数は2026年6月末時点で68,210店と業界最多水準です。このうち9割以上が管理戸数1,250戸以下の中小不動産管理会社(「Small領域」)で、大手が本気を出しにくい層に食い込めていることが、シェア拡大の下支えになっていると見られます。
③ アルファー社のM&A(中期経営計画に含まれない上振れ材料、ただし買収倍率には懸念)
2026年7月、九州地盤の家賃債務保証会社アルファー社(売上高14.4億円、2025年8月期)を13.5億円で完全子会社化しました。
会社の決算説明資料では、このM&Aは「中期経営計画に含まれない潜在的なアップサイド」と明記されており、既存の成長計画に上乗せできる材料として期待できます。ただし会計処理は未確定で、連結業績への具体的な寄与額はまだ開示されていません。
その後、日本経済新聞の報道でアルファー社の収益力(2025年8月期、純利益4,400万円・純利益率約3.1%)が判明しました。取得額13.52億円をこの純利益で割ると買収倍率は約30.7倍相当となり、NSグループ自身の現在PER(約10.1倍)や同業他社・全保連(11〜12倍)を大きく上回る水準です。アルファー社の純利益率(3.1%)はNSグループ自身(21.2%)よりかなり低く、現状の収益力のまま連結されるならROE(資本効率)を薄める方向に働くと考えられます。
半期報告書には「当社グループがバリューアップを支援していく」との記載があり、アルファー社の収益性をNSグループ並みまで引き上げられれば、この買収倍率も正当化されうるという見方もできます。ただし、この収益改善が実際に進むかどうかは現時点では未確認・未確定です。
④ 社会構造要因
単身世帯の増加や外国人労働者の増加、連帯保証人の確保が難しくなっていることなど、業界全体への追い風は複数の資料で一貫して言及されています。ただし前述の通り市場全体の成長率自体はそこまで高くないため、成長ドライバーの主役はあくまでシェア拡大にあると捉えるのが妥当だと思います。
会社予想は保守的か、楽観的か
| 指標 | 2026年上期実績の進捗率 | 前年同期の進捗率 |
|---|---|---|
| 営業収益 | 48.9% | — |
| 営業利益 | 51.2% | 52.3% |
| 税引前利益 | 51.3% | — |
| 中間利益 | 51.5% | — |
進捗率だけ見ると前年並みかやや低いペースで、極端に保守的とも楽観的とも言えない「普通」の進捗に見えます。
ただし、逆算した下期計画は前年比+23.1%と、上期実績の前年比(+18.2%)を上回る強気な計画になっている点が気になり、詳しく調べてみました。
「強気な下期計画」は錯覚だった
一時費用(全年で14.49億円)の期別配分を決算説明資料の脚注から逆算すると、その8割にあたる11.58億円が前年下期(上場日直前)に集中していたことが分かりました。この一時費用を除いた「クリーンな下期」同士で比較すると、実態はまったく違って見えます。
| 一時費用抜き営業利益 | 前年比(クリーン同士) | |
|---|---|---|
| H1(2025クリーン→2026実績) | 54.50億円→60.96億円 | +11.85%(実績・確定) |
| H2(2025クリーン→2026予想) | 58.72億円→58.02億円 | ▲1.19%(予想・未確定) |
つまり、実力ベースの成長は上期にほぼ前倒しで実現済みで、会社の公式な下期計画は横ばい〜微減という中身になっていました。見た目の「強気な下期計画(+23.1%)」は、一時費用で押し下げられていた前年下期との比較による錯覚で、実態としてはむしろ保守的な計画と読めます(もちろん上振れの余地はあり、確定するのは11月の第3四半期決算です)。
横ばい計画の正体は「売上鈍化」ではなく「コスト増」
では、なぜ下期は横ばい計画なのでしょうか。売上の内訳を見る限り、犯人は売上ではなさそうです。2026年上期の売上は、フロー(新規保証料+8.6%)よりもストック的な収入(更新保証料+その他、合算約+15.5%)に牽引されており、下期の売上計画(前年比+9.65%)も大きくは減速しません。
一方で、営業利益率だけが上期実績(37.69%)・前年下期のクリーン値(38.11%)のいずれよりも低い34.34%に落ちる計画になっています。つまり「成長が止まる」のではなく、「下期はコストが売上の伸びより速く増える計画になっている」というコスト側の問題というのが正確な実態です。
この費用構造を一次資料の内訳から確認したところ、2025年12月期の営業利益成長率の鈍さ(+12.0%、売上成長率+13.2%を下回る)の主因は次の2つでした。
- 支払手数料の急増(+27.7%):単体決算で5百万円→11.35億円と突出して増加。中身は上場準備アドバイザリー費用とマネジメントフィーで、いずれも2026年12月期以降は発生しない一過性の費用です。
- 従業員給付費用の増加(+15.4%):決算短信に「今後の成長に備えた人員増強」と明記されており、先行投資的な性格が強いと読めます。
一方、貸倒関連費用の伸び(+3.7%)は売上成長率(+13.2%)を大きく下回っており、審査・回収という事業の根幹はむしろコストが抑制されている、というポジティブな材料です。
2026年上期の費用内訳を見ると、支払手数料も従業員給付費用も伸びが正常化しており(いずれも売上成長率並みかそれ以下)、2025年の費用急増が一過性だったことが実際の数字で裏付けられています。ただし、人員増強のペースが今後も続くのか、2026年12月期通期で営業レバレッジが働くようになるのかは、次回以降の決算で確認が必要なポイントです。
なぜ2026年12月期は大幅増益の予想なのか
前述の一時費用(上場関連費用等9.17億円+マネジメントフィー5.33億円)のうち、マネジメントフィーの契約相手はベインキャピタル(2024年1.65億円→2025年0.83億円)と創業者の資産管理会社であるBiVaホールディングス(2024年1.50億円→2025年4.50億円)で、いずれも「IPOクロージング時」に終了する契約設計でした。2025年12月期にはBiVaホールディングスへの上場成功報酬4.125億円(税込)が一括で発生しています。
つまり正確には「年間3.15億円規模の経常的な顧問料がなくなる代わりに、解約時に4.125億円の一括精算報酬が発生した」という構造で、単純な「一時費用の消失」というより、費用の中身が入れ替わったと理解するのが正確です。2026年12月期以降はこの顧問料・精算報酬とも発生しない前提になっています。
中期経営計画から見た保守性
会社が2025年11月に公表した中期経営計画では、2027年12月期の営業収益目標は約365億円とされています。2025年実績(298.3億円)からこの目標まで逆算すると、年率(CAGR)は約10.6%です。
これは後述する目標株価試算で使う「基本シナリオ(+15%/年)」よりも保守的な数字で、実力ベースの利益成長率(+5〜10%程度)とも近い水準です。会社自身の公式な成長目標を基準にすると、機械的に延長した株価試算はやや楽観的だった可能性があると考えています。
目標株価の試算
分析時点の株価:1,555円(2026年9月18日)
会社予想EPS153.50円、現在PER10.13倍、PBR2.95倍
| シナリオ | 想定年率成長率 | 2年後EPS試算 | 想定PER | 目標株価レンジ | 現在株価比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 弱気 | +10%/年 | 約185.7円 | 15〜20倍 | 約2,786〜3,714円 | 約1.79〜2.39倍 |
| 基本 | +15%/年 | 約203.0円 | 18〜23倍 | 約3,654〜4,669円 | 約2.35〜3.00倍 |
| 強気 | +20%/年 | 約221.0円 | 20〜25倍 | 約4,420〜5,525円 | 約2.84〜3.55倍 |
これは過去のEPS成長率トレンド(FY2023 97.90円→FY2026予想153.50円)を機械的に延長した自社試算であり、会社の公式見通しではない点には注意をしてください。
ここまで見てきた「実力ベースの利益成長率(+5〜10%程度)」を踏まえると、この3つのシナリオのうち実態に最も近いのは「弱気(+10%/年)」で、「基本(+15%/年)」「強気(+20%/年)」は当面の実力ペースよりかなり高めの前提だと考えられます。
PEGレシオを計算し直したら、評価が変わった
当初、この記事ではPERを利益成長率で割ったPEGレシオ(1.0以下で割安、0.5以下で「かなり割安」とされる指標)を0.41〜0.50と算出し、「かなり割安の境界線」と評価していました。しかし後日見直したところ、この計算には誤りがありました。
使っていた成長率「+20.2%」は、実は2025年12月期の会社予想の伸びではなく、2024年→2025年という異なる期間の調整後成長率を誤って引用したものでした。前述の「実力ベースの伸び率」(一時費用を正しく除いた当期利益成長率+8.4%、アルファー社の寄与を強気に見積もっても+10.3%)で計算し直すと、PEGは0.98〜1.21になります。
これは「かなり割安」どころか、「割高」〜「かろうじて割安の境界」という水準です。入口の割安感の根拠としていた材料が、実質的になくなってしまったことになります。この点は率直にお伝えしておきたいと思います。
想定PERの妥当性
想定PERとして使った18〜23倍という水準は、収益性・資本効率のプロファイルが最も近い同業他社である全保連(5845、実績PER11〜12倍程度)の市場評価と大きく乖離しています。市場が家賃保証ビジネスに現状付けているPER水準を踏まえると、この試算は前提からしてやや楽観的である可能性が高いと考えられます。
なお、比較対象にしてきた全保連は、2025年4月にMUFG(三菱UFJニコス)のTOBを受けて50.26%を取得され、連結子会社になっていたことも分かりました。上場は維持されていますが、メガバンク傘下という立場になった後の株価・PERである点は留意が必要です。
PERだけでは見えないEV/EBITDA比較
| NSグループ | 全保連(概算) | |
|---|---|---|
| 時価総額 | 811億円 | 323億円 |
| 有利子負債 | 259億円 | ほぼゼロ |
| 現金同等物 | 134億円 | 104億円 |
| EV(企業価値) | 約936億円 | 約218億円 |
| EBITDA | 約138億円(2026年予想) | 約43億円(概算) |
| EV/EBITDA | 約6.8倍 | 約5.1倍 |
PERだけ見るとNSグループ(10.1倍)は全保連(11.3倍)よりやや割安に見えますが、負債とのれんを考慮したEV/EBITDA(企業価値をEBITDAで割った指標で、負債の大小に左右されずに実質的な稼ぐ力に対する割高・割安を測れます)で見ると、評価が逆転します。
ほぼ無借金の全保連に対し、NSグループは259億円の借入と360億円ののれんを抱えており、企業価値ベースで見るとむしろ割高という結果になりました。PERという指標だけで「割安」と判断するのは注意が必要だと痛感した論点です。
なお全保連側のEBITDAはD&A非開示のため概算値であり、精度には限界がある点はご注意ください。
まとめると:2倍達成のハードルは当初想定より高い
PEGレシオの訂正、実力ベースの成長率の低さ、想定PERの妥当性への疑問、EV/EBITDAで見た割安感の消失、アルファー社の割高な買収倍率――これらを総合すると、目標株価試算で示した「2年で株価2倍」というシナリオは、当初考えていたよりもハードルが高いと考えるのが妥当です。株価がさらに調整するか、アルファー社のシナジーなど成長率を押し上げる材料が実際に確認されない限り、基本・強気シナリオの実現性は高くないと見ています。
懸念点
① 成長鈍化リスク
ここまで見てきたとおり、実力ベースの利益成長率は営業利益+5.1%・当期利益+8.4%程度にとどまり、会社の公式な下期計画も一時費用を除くと横ばい〜微減でした。人員増強のペースが今後も続くのか、通期で営業レバレッジがしっかり戻るのかは、次回の第3四半期決算(2026年11月頃)を待たないと確定しません。
また、家賃保証ビジネスは景気や賃貸市場の悪化時に代位弁済率(保証を履行する割合)が上がりやすい業態です。直近は7%台で安定していますが、簡易試算では過去に観測された10%水準まで戻ると営業利益が約1割、リーマン級のストレス(12%)では約2割押し下げられる計算になります。現在の株価(PER10倍程度)にこの耐性がどこまで織り込まれているかは判断が難しいところです。
② 希薄化・資金調達リスク
新株予約権は4件合計で発行済株式総数の最大8.8%(458.94万株)にあたる潜在株式があります。2026年中間期には一部行使があったとみられますが、直近時点での正確な残存規模は開示資料からは確認できませんでした。
また、現在の借入258.68億円のうち約76%(196億円)を占める「Facility B」は、7年後(2030年頃)に元本を一括返済する契約です。現状は財務制限条項に対してかなり余裕がありますが、返済期日が近づく数年前から、借り換えの可否やその時点の金利水準が焦点になり得ます。配当性向50%超・自己株買い約64.6億円という積極的な株主還元と、M&Aによる成長戦略が並走しているため、大型M&Aが必要になれば借入増加か株主還元の縮小のどちらかを迫られる可能性もあります。会社は当面、現金や未使用のコミットメントライン(20億円)で賄える体力があり、増資が近く必要になる兆候は今のところ見当たりません。
③ 保証業特有の信用リスク(オフバランスの保証残高)
NSグループが抱える金融保証契約の最大保証履行エクスポージャー(万が一すべて保証を履行することになった場合の最大負担額)は、2025年12月末時点で約4,082億円にのぼります。これは自己資本(288.8億円)の約14倍という規模です。保証業というビジネスモデル上、貸借対照表に乗らない保証残高が自己資本を大きく上回るのは構造的なものですが、規模として認識しておく価値はあります。
これに加えて、自己資本比率38%前後・のれんが総資産の約47%という、もともと薄めの資本構造を抱えている点も踏まえると、賃貸市場が想定以上に悪化した場合の耐久力には注意が必要です。
④ 競争環境の変化(LICC終了・全保連のMUFG傘下化)
入居者の滞納歴を保証会社間で相互照会できる仕組み(LICC「代位弁済情報データベース」)が2026年3月末で運用終了し、他社で過去に滞納した新規申込者を検知する「横串チェック」機能が失われました。NSグループのAI審査モデルは自社で蓄積した470万件のデータが主軸とみられ影響は限定的な可能性がありますが、この機能喪失自体は事実です。
加えて、比較対象にしてきた全保連は2025年4月にMUFG(三菱UFJニコス)の連結子会社になっており、メガバンクの信用情報基盤を使える可能性も一部で語られています(未確認情報)。もしそうなら、NSグループより全保連の方が「他社滞納の検知力」で相対的に有利になるという競争リスクが浮かびますが、現時点(2026年上期)の代位弁済率に悪化の兆候はなく、判断材料はまだ不足しています。
現時点の私の判断
正直に書くと、この銘柄を調べ始めた当初は「PEGレシオがかなり割安で、業界シェアも首位」という組み合わせに魅力を感じていました。ただ、精査を重ねる中でPEGレシオの計算に誤りがあったことに気づき、修正後の数字(0.98〜1.21)では「割安」という評価はほぼ成り立たなくなりました。
財務スコアで明確に基準を満たしているのはROEだけで、営業利益成長率・自己資本比率・PEGレシオはいずれも基準未達〜境界線です。目標株価試算で使った想定PERも同業他社の実績水準と乖離しており、EV/EBITDAで見直すとPERほどの割安感は感じられません。アルファー社の買収倍率(約30.7倍相当)も割高な水準でした。バリュエーション面で「割安」を裏付ける材料は、調べれば調べるほど乏しくなっていったというのが率直な感想です。
一方で、事業の成長そのものが崩れているわけではありません。売上は二桁成長を続けており、市場シェアは首位を維持したまま拡大し、営業利益率の低さも一時費用と先行投資が主因で、構造的な悪化ではなさそうだと分かりました。需給面でも、創業者が2026年3月に持株比率を買い増していたこと(51.11%→52.13%)や、懸念材料だったベインキャピタルの保有株がすでに全て売却完了していること、チャートが調整のたびに安値を切り上げていることなど、ポジティブな材料も出てきています。
つまり「成長は本物だが、今の株価はその成長に対して割安とは言えない」という状態に近いと感じています。積極的な買い候補と判断するには材料が出揃っておらず、次回の四半期決算(2026年11月頃)でアルファー社の連結寄与や下期の利益率の推移を確認しながら、追加確認を経た上で改めて評価したいと考えています。しばらくは様子見のスタンスです。
まとめ
- NSグループは家賃債務保証業界で全用途市場シェア10.9%(業界No.1、前年比+0.6pt)を握る、2025年12月上場の新興企業です
- 見た目の2026年12月期会社予想(営業利益+20.5%・当期利益+24.9%)は一時費用消失の押し上げ効果を大きく含んでおり、実力ベースの伸び率は営業利益+5.1%・当期利益+8.4%程度にとどまります
- 「強気に見える下期計画(+23.1%)」は前年の一時費用による錯覚で、実態はクリーンな下期同士で横ばい〜微減。原因は売上ではなく、人員増強などによるコスト増でした
- 当初PEGレシオを0.41〜0.50(かなり割安)としていましたが、計算に誤りがあり、正しくは0.98〜1.21(割高〜かろうじて割安の境界)でした。この訂正により「割安」の根拠はほぼ失われています
- 目標株価試算(機械的延長)の基本・強気シナリオは実力ベースの成長率より高めの前提で、想定PERも同業他社実績(全保連PER11〜12倍)やEV/EBITDA比較と乖離しています
- 比較対象の全保連は2025年4月にMUFG傘下に入っており、「純粋な独立系同業他社」としての比較には留意が必要です
- 懸念点は新株予約権の残存規模不明・自己資本比率の低さ・LICC終了に伴う横串チェック喪失・アナリストカバレッジの薄さ・アルファー社の割高な買収倍率(約30.7倍相当)など複数あります
- 一方で事業の成長自体は健全に見え、創業者の持株買い増しやベインキャピタルの売却完了、チャートの安値切り上げなど需給面のポジティブ材料もあり、「成長は本物だが今の株価は割安とは言えない」という位置づけで、現時点では様子見(保留)のスタンスとしています


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